行春ゆくはる)” の例文
虚子先生行春ゆくはるの感慨御同様惜しきものに候。然る所小生卒業論文にて毎日ギュー。閲読甚だ多忙。随って初袷の好時節も若葉の初鰹はつがつおのと申す贅沢ぜいたくも出来ず閉居の体。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
五日ほどして、私は「行春ゆくはる名殘なごり」と題した自叙傳とも云ふべき一篇を懷中ふところにして、若し此れを發表するならば私の死後明治の文壇は如何なる驚嘆の聲を發するであらう。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
白き家鴨あひる、五羽ばかり、一列に出でて田の草の間をあさる。行春ゆくはるかげを象徴するもののごとし。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
行春ゆくはるの港より鳴る船笛ふなぶえの長きこだまをおもひ出でなむ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
行春ゆくはるやあまり短き返り事 水巴
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
行春ゆくはるの富士も拝まんわかれかな
行春ゆくはるやゆるむ鼻緒はなを日和下駄ひよりげた
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)