行掛ゆきがか)” の例文
従前からの行掛ゆきがかりでお千代の方に相応の弱みがある為め、どうしても手強く排斥して仕舞う事が出来ないのだという位の事は、追々おいおいに想像する事が出来るようになった。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
会話の皮切かわきりに清子の夫を問題にする事の可否は、利害関係から見ても、今日こんにちまで自分ら二人の間に起った感情の行掛ゆきがかじょうから考えても、またそれらの纏綿てんめんした情実をかたわらに置いた
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
翌朝五百は貞固をうて懇談した。大要はこうである。昨日さくじつおおせは尤至極である。自分は同意せずにはいられない。これまでの行掛ゆきがかりを思えば、優善にこの上どうして罪をあがなわせようという道はない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
行掛ゆきがかじょう私は静子の相談相手であり、保護者の立場にあった。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私の手紙は一言ひとことの返事さえ受けずに葬られてしまったのです。私も腹が立ちました。今までも行掛ゆきがかり上、Kに同情していた私は、それ以後は理否を度外に置いてもKの味方をする気になりました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)