行懸ゆきがか)” の例文
行懸ゆきがかり、ことばの端、察するに頼母たのもしき紳士と思い、且つ小山をばばが目からその風采ふうさいを推して、名のある医士であるとしたらしい。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それが赤シャツの指金さしがねだよ。おれと赤シャツとは今までの行懸ゆきがかり上到底とうてい両立しない人間だが、君の方は今の通り置いても害にならないと思ってるんだ」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
矢島優善やすよしは、陸が文一郎のさいになった翌月、即ち十月に、土手町に家を持って、周禎のもとにいた鉄を迎え入れた。これは行懸ゆきがかりの上から当然の事で、五百ははたから世話を焼いたのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「——気がしたから、私は話すまい、と思った。けれども、行懸ゆきがかりで、揉消もみけすわけにも行かなかったもんだから、そこで何だ。途中で見たものの事を饒舌しゃべったが、」
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)