行年ぎょうねん)” の例文
が、大体を明かにすれば、伝吉は維新いしん後材木商を営み、失敗に失敗を重ねた揚句あげく、とうとう精神に異状を来した。死んだのは明治めいじ十年の秋、行年ぎょうねんはちょうど五十三である。
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
行年ぎょうねんその時六十歳を、三つと刻んだはおかしいが、数え年のサバをんで、私が代理に宿帳をつける時は、天地人とか何んとか言って、ぜんの問答をするように、指を三本
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
光誉春琴恵照禅定尼、と、墓石の表面に法名を記し裏面に俗名鵙屋琴、号春琴、明治十九年十月十四日歿、行年ぎょうねん五拾八歳ごじゅうはっさいとあって、側面に、門人温井ぬくい佐助建之と刻してある。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
碑には、彼が行年ぎょうねん四十二で、ここに斬られた命日を
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
粟野さんの前に出た保吉は別人のように慇懃いんぎんである。これは少しも虚礼ではない。彼は粟野さんの語学的天才にすこぶる敬意をいだいている。行年ぎょうねん六十の粟野さんは羅甸ラテン語のシイザアを教えていた。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
行年ぎょうねん十八、寅の八白はっぱくだ。」
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)