血脂ちあぶら)” の例文
手に取つて見ると、よく光つてをりますが、泥と夕立に洗はれながらも、血脂ちあぶらのべツとり浮いた、刄渡り六七寸の、凄い匕首です。
電閃でんせんの隙に、三太刀三人を斬って捨てた新九郎は、血脂ちあぶらをのせた四度目の太刀を振りかぶったが、途端に、何者とも知れぬ早技で
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
拔いて見るとベツトリ血脂ちあぶらが浮いて、切つ尖に少しばかり新しい齒こぼれのあるのは、一種の凄味をさへ加へるのでした。
「こんな所で、人間の血脂ちあぶらをながしたら、すぐにあしがついてしまう。そのまま、おもりをかけて、沖の深くへ抛り込んでしまうのがいちばんだ」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新九郎は、大円房覚明を斬って、まだ生々しい血脂ちあぶらの曇っている来国俊らいくにとしをスラリと抜き、揉み紙でひとしごきして、燈下に刃こぼれをあらためている——
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
番所へ行ってみると、船頭三吉の腹巻から百両の小判と血脂ちあぶらの浮いた出刃庖丁と、それから、厳重に縄を打ったままのお蔦が留め置かれております。
番所へ行つて見ると、船頭三吉の腹卷から百兩の小判と血脂ちあぶらの浮いた出刄庖丁と、それから、嚴重に繩を打つたまゝのお蔦が留め置かれて居ります。
血脂ちあぶらは古くにえの色はなま新しい、そぼろ助広すけひろの一刀をギラリと抜いてさやを縁側へ残し、右手めてしずくの垂れそうなのを引っさげて、しずしずとしいの下へ歩みだした。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一応拭き清めてありますが、それにもまた血脂ちあぶらが浮いて、どんより鉄色かねいろの曇って居るのは唯事ではありません。
そして彼が垂直にして持ち捧げていた長剣には、なるほど、血脂ちあぶらの曇りもとどめていなかった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一應拭き清めてありますが、それにもまた血脂ちあぶらが浮いて、どんより鐵色かねいろの曇つてゐるのは唯事ではありません。
「一つは燕女の持つてゐたもう一つの夜光の珠で、一つは權八が勘七を刺した血脂ちあぶらの浮いた匕首あひくちだ」
「研屋の方も、武家の註文主ばかり訊いて歩いたから解らなかつたんだ。遊び人の權三郎が、研賃をうんとはずんで、研屋忠兵衞に血脂ちあぶらを落さしたとは夢にも思はねえ」
奧方お高の方を刺した匕首あひくちが釣られてあつたかもわかりませんが、それも一時血脂ちあぶらを洗ひ去るための、假の隱し場所で、平次が來る前に匕首は安全な隱し場所に移したとすれば
「それから海女は水の中へ商売道具の鑿を捨てて来るはずはない。これがほかの者なら、泳ぎにくいのを我慢して、血脂ちあぶらのついた鑿を持って来て、濡れたまま元の場所に置くのがかえって不思議だ」