蛍草ほたるぐさ)” の例文
旧字:螢草
蛍草ほたるぐさ竜胆りんどう風の花が、熊笹のあちらこちらに見える。野生の石楠花しゃくなげが処々に咲いている。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
自分などは子供の時に、鴨跖草つきくさ即ち「つゆくさ」を、蛍草ほたるぐさともギイスグサとも呼んでいた。ギイスはきりぎりす、螽斯ぎす、はた織虫のことであり、蛍草の名は東京でも知られている。
藤吉郎は、一けい蛍草ほたるぐさんで、指先にもてあそんでいた。花に寄せて、誰をしのんでいるのだろうか。母か、寧子ねねか。——彼の多感多情は、彼の軍師竹中半兵衛が、誰よりもよく知っていた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのめざましい鬱金うこんはあの待宵まつよいの花の色、いつぞや妹と植えたらば夜昼の境にまどろむ黄昏たそがれの女神の夢のようにほのぼのと咲いた。この紫は蛍草ほたるぐさ、蛍が好きな草ゆえに私も好きな草である。
小品四つ (新字新仮名) / 中勘助(著)
そこには、いッぱいな、蛍草ほたるぐさが咲いていた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)