蚯蚓腫みみずば)” の例文
袷の上から、大なまくらな腕で斬り付けたので、それは蚯蚓腫みみずばれほどの傷をつけたかうかわかりませんが、二人の曲者を驚かすには十分でした。
検死のために露出された胸部には、同じ様な土色の蚯蚓腫みみずばれが怪しくななめに横たわり、その怪線に沿う左胸部の肋骨ろっこつの一本は、無惨にもヘシ折られていた。
デパートの絞刑吏 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
実物と対照して寸分違わぬ色と形に染付け始めましたが、これとても実に巧妙、精緻を極めたもので、浮上ったような蚯蚓腫みみずばれや、蜥蜴とかげのような血斑が
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
此方こちらは富五郎はバッサリ切った音を聞いて、すぐうちへ駈けてく、其の道すがらいばらか何かでわざ蚯蚓腫みみずばれの傷をこしらえましてせッ/\と息を切ってうちへ帰り
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
所が、小式部さんの首には、下締が幾重にも回されていて、その両側には、身体中の黒血を一所に集めたような色で、蚯蚓腫みみずばれが幾筋となく盛り上がっている。
絶景万国博覧会 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
それから、——それから先は誇張かも知れません。が、とにかく婆さんの話によれば、発頭人ほっとうにんのお上は勿論「青ペン」じゅうの女の顔を蚯蚓腫みみずばれだらけにしたと言うことです。
温泉だより (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
小枝や笹の葉が汗ばんだ額や首筋を容赦なく引掻き廻すので、蚯蚓腫みみずばれのした痕がひりひり痛む。ねじけくねった栂が出て来ると尾根も幾つかに岐れて、どれもこれも岩骨を剥き出している。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)