蘇武そぶ)” の例文
後五年、昭帝の始元しげん六年の夏、このまま人に知られず北方に窮死きゅうしすると思われた蘇武そぶが偶然にも漢に帰れることになった。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
成経 蘇武そぶ胡国ここくとの戦争に負けて、異域いいき無人むにんの山にえたけもののようになって、十五年間もさまよい暮らしました。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
今から二千年も前、漢の国に、蘇武そぶという人があって、皇帝の使者として、北の方の匈奴きょうどという国へ行った。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
十九年も別れてゐた蘇武そぶの妻が、秋になると夫の衣を砧で打つその思ひが、遠く離れてゐた蘇武そぶにきこえたといふことや、陳子ちんしは夫婦の別れに鏡を割つて一つづつ取り
蘇武そぶ
蘇武そぶの答えは問うまでもなく明らかであるものを、何もいまさらそんな勧告によって蘇武をも自分をもはずかしめるには当たらないと思ったからである。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
蘇武そぶと別れた後の李陵については、何一つ正確な記録は残されていない。元平げんぺい元年に胡地こちで死んだということのほかは。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)