薫育くんいく)” の例文
家庭では一人一人に対して充分の薫育くんいくほどこす事が出来る。家庭で充分に品性を養って学校ではただ物の仕上をしてもらう位に心得ていなければならん。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
於松にとっても、半兵衛は、数年薫育くんいくをうけた恩人、また生命いのちの親でもある。ここ昼夜その人の枕許に侍したまま具足も解かず、薬餌やくじの世話に精根を傾けていた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから以後ついぞ怒った試しがない。親爺はこれを自分の薫育くんいくの効果と信じてひそかに誇っている。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それが父の七歳の時ぐらいで、それから十五か十六ぐらいまでは祖父の薫育くんいくに人となった。
私の父と母 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
武家へ生れても孤児の宗右衛門は何のしつけ薫育くんいくさずからず、その部落の同情でかろうじて八九歳までの寿命を延ばしたに過ぎない。そして江戸の或る御用商人の小僧にやられた。
老主の一時期 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
官兵衛の為人ひととなりは小さい時から愛されたそのおじい様の薫育くんいくによるところが多かったのである。もう悪戯いたずらざかりの少年時代にそのおじい様の思想が少年の心になりかけていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)