薦僧こもそう)” の例文
この人が、塩瀬の服紗ふくさに包んだ一管の横笛を袴腰に帯びていた。貸本屋の女房がのっけに、薦僧こもそうと間違えたのはこれらしい。……ばかりではない。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
猿引・編木師ささらし・恵美須・辻乞・乞胸ごうむね弦指つるさし・盲目で、また八乞食とは、薦僧こもそう鉢坊はちぼう絵説えとき鉦打かねうち・舞々・猿牽さるひき・山守・渡守を云い、次に六道の者というは
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
薦僧こもそうの青木丹左は、黙ってうなずいた。その枯渇こかつしたすがたには、往年のどじょうひげやした侍大将の威風も旺盛な慾望の影も思い出せないほどだった。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
沢庵がここにぽつねんとともしていると、ゆうべはまったく独りで過ぎたが、こよいはもうその灯影ほかげを見かけて、一名の旅の薦僧こもそうが、夕飯を食べますので
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ではこの老い朽ちたる世捨人の薦僧こもそうは、いったいどういうものをそのれ竹から訴えようとしているのかというと、それはただ懺悔ざんげの二字に尽きるものであった。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今、日吉へ、手招きした薦僧こもそうもまた、よごれ腐った着物に、不精髯を生やしている組だった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
物乞ものごい薦僧こもそうなんかは、背骨を曲げて、ぺたんと坐るものだから、直ぐわかるさ
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この村へも、時々、はいってくる虚無僧こむそうである。薦僧こもそうとも呼んでいる。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)