蔭間かげま)” の例文
「身振りなんかしたつて、お前ぢや色若衆には見えないよ。そんなのは大方芝居の色子いろこのヒネたのか、蔭間かげまの大年増が道に迷つたんだらう」
じゃ、道頓堀の川ッぷちで、蔭間かげまが犬に食いつかれてるだろう。そんなものは見えねえッて。じゃおじさんが見てやろう、貸してごらんよ。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いわんや相手は蔭間かげまみたいなヘナヘナ男じゃないか。柔道こそ知らないが、スワとなったら、銀座界隈でチットばかり嫌がられて来たチョボ一だ。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
このなまめかしい羽織が女のような眉山の顔と釣合つりあって、影では蔭間かげまのようだと悪語わるくちをいうものもあったが、男の眼にも恍惚うっとりとするほど美くしかった。
なまじっか、律儀に、ご尊名などを聞かなければ、雲州侯うんしゅうこうも手玉に取った、御数寄屋おすきや坊主の宗俊が、蔭間かげま茶屋通いの、上野東叡山とうえいざん生臭なまぐさか、そんなことに頓着なく
青バスの女 (新字新仮名) / 辰野九紫(著)
「なあんだ、なまぐさ坊主のくせに、いやに好い男でいやがらあ、向うにいるあの坊主なんざあ、羽左衛門そっくりだぜ、大方坊主と見せて、蔭間かげまでもかせいでいたんだろう」
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「黙らッせい。どこの女中共かは知らぬが、蔭間かげまや御守殿ののさばり出る幕ではない。退けというのはお身共のこと、さッさと道をけて通らッせい」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きめてお前の話の相手になつてやらう。華魁の話でも蔭間かげまの話でも、夜が明けるまで續けてくれ。明神下の藪つ蚊は飛んだゑさにあり付いて、大喜びだとよ
役者、蔭間かげま、力士、その他の芸人、占者うらない、祈祷師、絵草紙、薬種、化粧品の行商人等の中にこの種の商売人が居たのであるが、今ではずっとこの範囲が広まっている。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
蔭間かげまを呼んでみるなんぞといったことは、一時の気紛きまぐれに過ぎないので、それに執心を持って来たわけでもなんでもないから、そんなことは、どうでもいいように眠くなったのです。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
谷中や湯島、芳町あたりの蔭間かげま茶屋にも、こんな艶姿あですがたの少年が養われて居たことは言うまでもありません。
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「ほんに、今ごろは、芝居小屋も蔭間かげま茶屋も、灯の色に染まっている頃だろうて」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
坊主の冒涜ぶりを貪看どんかんして、飽くことを忘れたこの眼が、その坊主が、蔭間かげまという人間界の変則なサード種族に似ているという偶語を聞いてから、その凝視から一時解放されると共に、今度は
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
谷中や湯島、芳町あたりの蔭間かげま茶屋にも、こんなあで姿の少年が養はれてゐたことは言ふ迄もありません。
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「おう、蔭間かげまのような生白いやつでも、もう少し恥や外聞は知っている」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なにッ、蔭間かげまだと?」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)