蒸々むしむし)” の例文
夜深しに汗ばんで、蒸々むしむしして、咽喉のどの乾いた処へ、その匂い。血腥ちなまぐさいよりたまりかねて、縁側を開けて、私が一番に庭へ出ると、みんな跣足はだしで飛下りた。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
信長がそれをり、秀吉がたばね、家康が地ならしと建築にかかりかけているが、まだ、まだ、危ないことは、附火木つけぎの火一ツで、天下を火となさんず気ぶりも蒸々むしむしと、西には満ちている。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
息が詰まるように蒸々むしむししていた。
蒸々むしむしと悪気の籠った暑さは、そこらの田舎屋を圧するようで、空気は大磐石に化したるごとく、嬰児みどりご泣音なくねも沈み、鶏のさえ羽叩くにものうげで、庇間ひあわいにかけた階子はしごに留まって
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)