葦垣あしがき)” の例文
宿直とのいの侍の詰めているほうへは行かずに、葦垣あしがきで仕切ってある西の庭のほうへそっとまわって、垣根を少しこわして中へはいった。
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
すると、なに思ったか、千種忠顕は「——道誉どの。ちょっと」と追いすがって、彼を外の葦垣あしがきの蔭へ誘おうとした。そして胸の密語を急に咡きかけそうに、その眼が挑んだ。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「一目見し人に恋ふらく天霧あまぎらしり来る雪のぬべく念ほゆ」(巻十・二三四〇)、「花ぐはし葦垣あしがきしにただ一目相見し児ゆゑ千たび歎きつ」(巻十一・二五六五)等の例が若干ある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「少将の歌われた『葦垣あしがき』の歌詞を聞きましたか。ひどい人だ。『河口かはぐちの』(河口の関のあらがきや守れどもいでてわが寝ぬや忍び忍びに)と私は返しにうたいたかった」
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
例の美音のべんの少将がなつかしい声で催馬楽さいばらの「葦垣あしがき」を歌うのであった。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
葦垣あしがきのまぢかきほどにはべらひながら、今まで影踏むばかりのしるしも侍らぬは、なこその関をやゑさせ給ひつらんとなん。知らねども武蔵野むさしのといへばかしこけれど、あなかしこやかしこや。
源氏物語:26 常夏 (新字新仮名) / 紫式部(著)