菰被こもかぶ)” の例文
まず芝生にむしろを敷き、あちこちに、枯れ枝薪などを積み集めて焚き火の用意をし、菰被こもかぶりをならべて、鏡を抜き杓柄ひしゃくを添える。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
内もひっそりしていて、菰被こもかぶりの据わった帳場の方の次の狭い部屋には、だるそうに坐っている痩せた女の櫛巻くしまき姿が見えた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
菰被こもかぶりの上に名入りの提灯ちょうちんをいくつも張り出した馬肉屋けとばしやの店先では、若衆わかいしゅが熊手を預る台を組んでいた。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
時々酒問屋さかどんやの前などを御通りになると、目暗縞めくらじまの着物で唐桟とうざん前垂まえだれを三角に、小倉こくらの帯へはさんだ番頭さんが、菰被こもかぶりの飲口のみぐちをゆるめて、たるの中からわずかばかりの酒を
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『亭主、その菰被こもかぶりを一たる、軒下へ出せ』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)