色文いろぶみ)” の例文
「人樣に書いて頂いたんですもの、色文いろぶみなんか、人に頼んで書かせるものぢやありませんわね、それやもう、じれつたいといふことは、ウ、フ」
友達の旆騎兵中尉は、「なに、色文いろぶみだろう」と、みずから慰めるように、跡で独言ひとりごとを言っていたが、色文なんぞではなかった。
ない/\御嬢様に色文いろぶみつけ、はじかれたを無念に思ひ、よくも邪魔をしをつたな。かうなれば、刀にかけて娘御はやらぬ。覚悟をしやれと、引抜く一刀。
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
色文いろぶみにしたっても、日がたちゃ油がぬけるんだ。その中にあるやつア、みんなかびのはえた訴え状ばかりですよ。
要するに普通の色文いろぶみだと、こちらがのぼせているから、初めから無暗むやみにセンチメンタルな事ばかり書く。一方に相手の方は惚れても何もいないのだから、あまり感服しない。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
と云われ、早四郎は馬鹿な奴ですから、右の手紙を書いて貰ってうちへ帰り、そっとお竹の袂へ投込なげこんで置きましたが、開けて見たって色文いろぶみと思う気遣きづかいはない。翌朝よくあさになりますと宿屋の主人あるじ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いくら浜村屋が酔興すいきょうでも、九つ十歳とおの娘などに色文いろぶみをつけるわけはない
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)