舟行しゅうこう)” の例文
この淀川のきしをぬってすすむかいどうは舟行しゅうこうには便利だったであろうが蘆荻ろてきのおいしげる入り江や沼地が多くってくがじの旅にはふむきであったかも知れない。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
都多つたの細江」は姫路から西南、現在の津田・細江あたりで、船場川せんばがわの川口になっている。当時はなるべく陸近く舟行しゅうこうし、少し風が荒いと船をめたので、こういう歌がある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
終日ひねもす舟行しゅうこうなので、退屈もむりはないが、舟の中ほどで、博奕ばくちが始まっていたからである。たしか花街いろまちの神崎あたりで、どやどや割りこんで来た今時風いまどきふうな若雑人の一と組なのだ。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
南に飾磨しかまの津をいだき、舟行しゅうこうの便はいうまでも候わず、高砂たかさご屋島やしまなどへの通いもよく、市川、加古川、伊保川いほがわなどの河川をめぐらし、書写山しょしゃざん増位山ますいやまなどのけんを負い、中国の要所にくらい
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが、ここには、宋朝そうちょうの世にれられぬ反骨の、不平のやからなどいつか何百人群れよって山寨さんさいをきずき、公然、時の政府に抗して義盗ととなえ、舟行しゅうこうや陸の旅人などをなやましていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)