ふく)” の例文
額がふくれたように高いのであるが、それでいて下方の長い顔に見えるというのは、全体がよくよく長い顔であることが思われる。
源氏物語:06 末摘花 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ところが、一週間と経たないうちに、お尻の所がいちように青くふくれ出して、腐れ出して、とうとう三羽とも可哀相にころりと倒れてしまった。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
私、見たことがありません! 變色した顏——恐ろしい顏でした。ぎよろ/\するあの血走ちばしつた眼と、あの恐ろしい黒ずんだふくれ上つた顏を忘れることが出來たなら!
造化は今のたいの弱みに乗じたるものならんか、いわゆる富士山頂の特有とも称すべき、浮腫ふしゅおかされ、全身次第にふくれて殆んど別人を見るが如き形相となりたり、この浮腫ふしゅということは
銀子の横顔に写る陽射しははかなき男の血潮であろうか、その接吻せっぷんふくれた唇
自殺 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
それでも十間ほどはふくはぎまで水が押し寄せた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
夢中で家のほうへ走り出すころに、海のほうは蒲団ふとんひろげたようにふくれながら光っていて、雷鳴と電光が襲うてきた。すぐ上に落ちて来る恐れも感じながら人々はやっと家に着いた。
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)