脳震盪のうしんとう)” の例文
死因は後頭部の打撲傷に依る脳震盪のうしんとうで、御覧の通り傷口は、脊髄に垂直に横に細く開いた挫傷で、少量の出血をしております。
気狂い機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
たとえ、ガソリンに火がつかなくとも、人間は脳震盪のうしんとうかなんかを起して、死んでしまうはずです。生ているなんてことは、考えられませんなあ
火星兵団 (新字新仮名) / 海野十三(著)
自分なども一度学校の玄関の土間のたたきに投げ倒されて後頭部を打って危うく脳震盪のうしんとうを起こしかけたことがあった。
相撲 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
山野夫人の部屋の押入れから出た石膏のかけらには、恐しく血痕がついていたのだから、台座の角が頭に当って、被害者は脳震盪のうしんとうを起したものに相違ない。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
多分この岩の上へ突き落されて、脳震盪のうしんとうおこして死んだのではあるまいか。勿論もちろん、これとても想像に過ぎない。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
昨夜ゆうべからの事が判明したので、元五郎親爺の死因は過失から来た急劇脳震盪のうしんとうということに決定したが、一方にお八重の胎児の父はどうしてもわからなかった。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
医師の診断によると、後頭部の傷は手斧の背のようなもので撃ったもので、脳震盪のうしんとうを起して居るが、レントゲンで診断したら、或は頭蓋骨を砕いて居るかも知れない。
呪の金剛石 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
愉快にも余は臀部でんぶ及び肩胛骨けんこうこつに軽微なる打撲傷を受けしのみにて脳震盪のうしんとうの被害を蒙るにはいたらなかったのであるが、余の告訴に対し世人は挙げて余を罵倒したのである。
風博士 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
傷は深くないが脳震盪のうしんとうを起すから双手を延してぶるぶると震わしたまま、頭を枕から外して、ぐったりと横へ倒れた。暫く様子を窺ってから、近寄ってみるとこと切れているらしい。
相馬の仇討 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
脳震盪のうしんとうを起こしたんだろうと想像していますが、それにしてもゼ号をあのように高い山の上へ吹き飛ばした外力というものは一体何物だったんですか
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
かわいい小さなからだを筒形に強直させて死んでいる。北窓から飛び込んで南側の庭へ抜けるつもりでガラス障子にくちばしを突き当てて脳震盪のうしんとうを起こして即死したのである。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
今度は旦那様の御遺骸いがいでございますが、これはまことにむごたらしいお姿で、なんでも頭の骨が砕かれたため、脳震盪のうしんとうとかを起こされたのが御死因で、もうひとつひどいことには
幽霊妻 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
正木先生も急激な脳震盪のうしんとうで呼吸も止まっているからとても助からぬと云うておられましたが、やはり、手足が不自由なまま、壁に頭を打ち付けたのですから、そう強くなかったのでしょう。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その結果、彦太郎の父親は「鈍器による打撃の為に脳震盪のうしんとう
夢遊病者の死 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「あのお腹の大きい縫工員ほうこういんのベルガー夫人ね。さっきころんだ拍子ひょうしに床の上にお産をしてしまったよ。飛び出した赤ちゃんは脳震盪のうしんとうを起すし、夫人は出血が停らなくて大さわぎだったよ」
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
十四五間四方ぐらいは急激脳震盪のうしんとうを起して引っくり返る。その外側の二十間四方ぐらいの奴は眼をまわして、あとからあとから海面が真白になる程浮き上る。その中を漕ぎまわる。すくう。漕ぐ。掬う。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)