脂気あぶらけ)” の例文
しかしこの食堂に這入はいって来るコンマ以下のお役人には、一人も脂気あぶらけのある顔はない。たまに太った人があるかと思えば、病身らしい青ぶくれである。
食堂 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
けれど、一夏、岩木川の氾濫はんらんがあると、全民は打ちのめされて、また二年か三年は、火あぶりになっても税も脂気あぶらけも出ないという領民がたくさん出来た。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここでしばらく飼うと脂気あぶらけが抜けてしまうそうで、そのさっぱりした味がこの土地に相応ふさわしいような気もした。
雨の上高地 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
が、黒い垢すりの甲斐絹かひきが何度となく上をこすつても、脂気あぶらけの抜けた、小皺の多い皮膚からは、垢と云ふ程の垢も出て来ない。それがふと秋らしい寂しい気を起させたのであらう。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし利口そうでちょっとかわいく、山羊やぎみたいな面影があり、脂気あぶらけの多い金色の皮膚をしていた——それが急に宮廷音楽員をちやほやしだしたので、アーダはなお感銘を受けた。
それからチベットの御馳走というのはごくしつこい物ばかりで、シナ人よりも脂気あぶらけの多い肉のような物ばかり喰うです。あっさりとお茶漬にこうの物というような御馳走は夢にもいただけない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
が、黒い垢すりの甲斐絹かいきが何度となく上をこすっても、脂気あぶらけの抜けた、小皺こじわの多い皮膚からは、垢というほどの垢も出て来ない。それがふと秋らしい寂しい気を起させたのであろう。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)