胡簶やなぐい)” の例文
それにかこまれて、沙金しゃきんは一人、黒い水干すいかん太刀たちをはいて、胡簶やなぐいを背に弓杖ゆんづえをつきながら、一同を見渡して、あでやかな口を開いた。——
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
兵部卿ひょうぶきょうの宮もおいでになった。右大将は羽振りのよい重臣ではあるが今日の武官姿のえいを巻いて胡簶やなぐいを負った形などはきわめて優美に見えた。色が黒く、ひげの多い顔に玉鬘は好感を持てなかった。
源氏物語:29 行幸 (新字新仮名) / 紫式部(著)
陣刀、鎧櫃よろいびつ胡簶やなぐいなどを、いかめしく飾った大床を背にし、脇息にもたれている兄六郎の、沈思する顔を見守りながら、舎弟の七郎は色白下膨しもぶくれの、穏かな顔を少しひそめて火桶の胴をすっていた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
よき弓、胡簶やなぐい馬鞍太刀くらたち
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)