胡兵こへい)” の例文
秋雲の間にときとしてたかはやぶさかと思われる鳥の影を見ることはあっても、地上には一騎の胡兵こへいをも見ないのである。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
建文いまだ死せず、従臣のうち道衍どうえん金忠きんちゅうの輩の如き策士あって、西北の胡兵こへいを借るあらば、天下の事知る可からざるなり。鄭和ていか胡濙こえいづるある、徒爾とじならんや。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
天地をゆるがす喊声かんせいとともに胡兵こへいは山下に殺到した。胡兵の先登せんとうが二十歩の距離に迫ったとき、それまで鳴りをしずめていた漢の陣営からはじめて鼓声こせいが響く。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
たちまち千弩せんどともに発し、弦に応じて数百の胡兵こへいはいっせいに倒れた。間髪かんはつを入れず、浮足立った残りの胡兵に向かって、漢軍前列の持戟者じげきしゃらが襲いかかる。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)