肩尖かたさき)” の例文
少しく追加するとインドのマラワルの俗信に虎の左の肩尖かたさきの上に毛生えぬ小点あり、そこの皮また骨を取り置きてめ含むと胃熱を治す
鼈四郎は病友の屍体したい肩尖かたさきに大きく覗いている未完成の顔をつくづく見瞠みいり「よし」と独りいって、屍体を棺に納め、共に焼いてしまったことであった。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
此時横井の門人下津は、初め柳田に前額を一刀切られたのに屈せず、奮闘した末、柳田の肩尖かたさきを一刀深く切り下げた。柳田は痛痍いたでにたまらず、ばたりと地に倒れた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
されど謝肉祭の間に思慮せんといふも、固より世にたぐひなき好事かうずにやあらん。忽ち肩尖かたさきと靴の上とに鈴つけたる戲奴おどけやつこ(アレツキノ)の群ありて、我一人を中に取卷きて跳ね𢌞りたり。
様子を見てゐた跡部が、「それ、切り棄てい」と云ふと、弓のまで踏み出した小泉の背後うしろから、一条が百会ひやくゑの下へ二寸程切り附けた。次に右の肩尖かたさきを四寸程切り込んだ。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
肩尖かたさきに歯痕あり、子孫に連綿と勤めおるが、肩には歯痕ごとき物あり
その時りよは一歩下がって、つかを握っていた短刀で、抜打に虎蔵を切った。右の肩尖かたさきから乳へ掛けて切り下げたのである。虎蔵はよろけた。りよは二太刀三太刀切った。虎蔵は倒れた。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)