聞付ききつ)” の例文
「トム、トム……。」と、二三度呼んだが、犬は食物くいものに気をられて、主人の声を聞付ききつけぬらしい。市郎は舌打したうちしながら引返ひっかえして来た。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
取次の下女としきりに問答して居る様子、狭い家だからスグ私が聞付ききつけて、玄関に出てその客を座敷に通したことがあるが、成るほど殿様といって下女に分る訳けはない
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
この騒ぎを聞付ききつけて、町の家々でも雨戸を明けた。「賊だ、賊だ。」と叫ぶ声がそれからそれへと伝えられた。重太郎は哀れや逃場にげばを失った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
の水音に消されて、今までは誰も聞付ききつけなかったが、何処どこやらでかすか唸声うなりごえが聞えるようである。巡査はたちまちに耳をそばだてた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)