聖人ひじり)” の例文
琉球あちらの、古い昔の聖人ひじりの息が、この竜の手にかかっておりますんじゃ。先ざきのことまで、ずんと見通しのきく、世にも偉い御仁であったと申す。
ウルピノさん聖人ひじりおつしやつたやうに、むかしから色々いろ/\口碑くちつたへのあるなかで、船旅ふなたびほど時日ときえらばねばならぬものはありません、凶日わるいひ旅立たびだつたひと屹度きつと災難わざはひ出逢であひますよ。
上に刃向かった人間の栄えた例はないというが、戦の聖人ひじりうやまわれている彼の甲州の信玄様は父を押しこめた不孝者でござる。越後の上杉謙信公も兄に逆らった不悌ふていの方じゃ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
聖人ひじりも俗人も、本来、人間のすがたというものはひとつである。いわんや女人、いわんや悪人、なんの差別があろう。むしろ、そういう人々こそ、念仏門は、よろこんで迎え入れ、求法ぐほうの悩みに答えたい。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)