義捐ぎえん)” の例文
やがて銅貨三銭をもってかいより始めつ。帽子を脱ぎてその中に入れたるを、衆人ひとびとの前に差し出して、渠はあまねく義捐ぎえんを募れり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
刑鞭をふるふ獄吏として、自著自評の抗難者として、義捐ぎえん小説の冷罵者として、正直正太夫の名を聞くこと久し。
演奏会は常に何かの形で、軍関係に義捐ぎえんの催しでなければならなかった。オーケストラ部員は白と黒との服装を捨ててカーキ色の国民服というものを着た。
今日の日本の文化問題 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
第二囘はいつのことだか忘れたが、とにかく湖北こほく水災義捐ぎえん金を募集して譚叫天たんきょうてんがまだ生きている時分だ。
村芝居 (新字新仮名) / 魯迅(著)
筆とりてひとかどのこと論ずる仲間ほど世の中の義捐ぎえんなどいふ事にひややかなりと候ひしあざけりは、私ひそかにわれらにかかはりなきやうの心地ここち致しても聞きをり候ひき。
ひらきぶみ (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
得ば本会の面目不過之これにすぎずと存そろ何卒なにとぞ御賛成ふるって義捐ぎえんあらんことを只管ひたすら希望の至にえずそろ敬具
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
編輯者 盗まれると思へば不快ですが、義捐ぎえんすると思へばかまはんでせう。
売文問答 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
早瀬がああいう依怙地いこじもんですで。半分馬鹿にしていて、孤児院の義捐ぎえんなんざ賛成せんです。今日は会へも出んと云うそうで。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
死金にもなり、悪銭にもなり、義捐ぎえん金にもなれば、自殺の旅費にもなるのである。