羅典ラテン)” の例文
羅典ラテンの聖なる祈りの歌を、老宣教師が最低音バスで歌って行くと、その後を縋けてお夏の最高音ソプラノが、霜空に静かに静かに響きました。
本国仏蘭西フランスに於ては著名な羅典ラテン語学者で、私はこの御両名から、日本に於て本当に羅典語を解する人は最上清人だらうと承つたことがある。
金銭無情 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
正直で単純で熱情的な、羅典ラテンとフレミシュの混血族である。彼らはしんから感嘆しているのだ。ただ一つ「蛙男かわずおとこ」にはへんに吐きたくさせられた。
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
無学な負傷兵にはわからない露西亜ロシア語と、羅典ラテン語と、術語をゴッチャにした独逸ドイツ語で質問しはじめた。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そして「私のは合理にる美的判断の結果、粗物を棄捨した現実脱化です。心理学的方法はリップスに拠りますが、むかしの羅典ラテン民族と同じエスプリです。詩人の魂です」
噴水物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
もっとも彼女の遺文は主として哲学乃至ないしは宗教の論議にわたるものであり、つその一部が羅典ラテン語で記されてゐることなどが、ながく一般の注意の彼方かなたに逸し去つた原因であるかも知れぬ。
ジェイン・グレイ遺文 (新字旧仮名) / 神西清(著)
何処かに羅典ラテンか、亜米利加土人の血がうっすらと混っていることを想わせる感じ。
土から手が (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
「どうも西洋の学者は、何ぞと云うと直ぐ羅典ラテンや希臘をかつぎ出すから厄介です」
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
これは羅馬の文化がアルプスを北に越えてから、中欧の文化開明期に、地方語の歌のほかに羅典ラテン語の詩が書かれ、学者の間にはながく羅典語が使用されたのと全く同じ現象であったのである。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
神様!……——羅典ラテンの末期にありましては
伊太利イタリー西班牙スペイン葡萄牙ポルトガルなどの、南欧羅巴ヨーロッパ羅典ラテン系文明が、近世に到って一足遅れたのは、奴隷として輸入された黒人の血が、雑婚によって吸収されたためだと言う説があるくらいですから。
踊る地平線:10 長靴の春 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
ふたたび、喝采・動揺・乱舞する日光——羅典ラテン的場面の大燃焼だ。