)” の例文
自分の肩から上を気圏のようにぐっていたぶとの幾十陣団じんだんやに窒息するかと苦しんだことも、夢の谷へ下りては、夢のように消えて、水音は清々すがすがしい。
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
「これが加茂かももりだ」と主人が云う。「加茂の森がわれわれの庭だ」と居士こじが云う。大樹たいじゅぐって、ぎゃくに戻ると玄関にが見える。なるほど家があるなと気がついた。
京に着ける夕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
被害者野口がおとされたと思われる東北側の隅へ歩み寄り、腰をかがめてタイル張りの床を透かして見たり外廓を取りぐる鉄柵の内側に沿う三尺幅の植込みへ手を突込んで
デパートの絞刑吏 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
石楠花しゃくなげ石楠花という声が伝わった、そりゃもう登山家マウンティニアーでなくては、想像の出来ない、世間も、人間も忘却した、心底からこみ上げて来る嬉しい声が、この一株をぐって起った、白峰の雪は白い
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
笠ヶ岳の長い尾根が高くつらなっているのと向い合って、右俣谷の上を截ち切るように、高くぐっているのは、槍ヶ岳から穂高岳、岳川岳へとかけた岩石の大屏風で、両方とも肩をれにして
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)