繊弱せんじゃく)” の例文
旧字:纖弱
また読者中繊弱せんじゃくなる女子に助言するなりまたはその他の親切をいえば、彼奴あいつはチト怪しいと疑われたこともあろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
それからまた一人を豪放ごうほうな男にすれば、一人を繊弱せんじゃくな男にするのにもやはり微笑ほほえまずにはいられません。現にK君やS君は二人とも肥ってはいないのです。
手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
黒い手編みの丸首のセーターが、薄っぺらな学生服のえりからはみ出し、むこうを向いた色白な秀才タイプの彼の首を、よけい繊弱せんじゃくに、かぼそく見させていた。
煙突 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
派手も明るさも、平家の人々がまとった浮薄ふはくとはちがう。繊弱せんじゃくではない。いたずらにぜいでもない。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の才能は余りに繊弱せんじゃくで、巧緻こうちに過ぎ、鏡花先生の悪い所にばかりカブレてゐた。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
私たちは、ときにはその繊弱せんじゃくな、か細い緊張した歌声に合わせて、「神風特別攻撃隊」や「学徒出陣の歌」や「丘の夕月」を、われ知らず小さく口ずさんだりするのだった。
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
郊外こうがいに移し令嬢れいじょうたちもまたスポーツに親しんで野外の空気や日光にれるから以前のような深窓の佳人かじん式箱入娘はいなくなってしまったが現在でも市中に住んでいる子供たちは一般に体格が繊弱せんじゃくで顔の色などもがいして青白い田舎いなか育ちの少年少女とは皮膚ひふえ方が違う良く云えば垢抜あかぬけがしているが悪く云えば病的である。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)