結跏趺坐けっかふざ)” の例文
荒廃したほの暗い金堂の須弥壇しゅみだん上に、結跏趺坐けっかふざする堂々八尺四寸の金銅坐像ざぞうであるが、私は何よりもまずその艶々つやつやした深い光沢に驚く。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
東方阿閦あしゅく如来、金剛忿怒尊、赤身大力明王、穢迹えじゃく忿怒明王、月輪中に、結跏趺坐けっかふざして、円光魏々、悪神を摧滅す。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
中央の岩上に結跏趺坐けっかふざした釈尊しゃくそんの周囲に、怪奇な魔衆が群り集っている、空想の限りをっくした絵である。
『西遊記』の夢 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
薄暗い底の台の上に結跏趺坐けっかふざしたまま睡っている僧形そうぎょうがぼんやり目前に浮かび上がってきた。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
我今すなわちすでに好きむこを得たりと。すなわち、指語すらく中に宿るべしと。阿那律すなわちすすみて室に入り結跏趺坐けっかふざす。坐して未だ久しからずしてまた賈客あり、来たりて宿を求む。
さてはうまいぞシテったり、とお通にはもとより納涼台すずみだいにも老媼は智慧を誇りけるが、いずくんぞ知らむ黒壁に消えし蝦蟇法師の、野田山の墓地にあらわれて、お通が母の墳墓の前に結跏趺坐けっかふざしてあらむとは。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
正面に結跏趺坐けっかふざする本尊を中心に、右に日光菩薩ぼさつ、左に月光がっこう菩薩が佇立ちょりつしているが、この二はあくまで本尊と調和を保って、云わば三尊そろって一つの綜合そうごう的な曲線を描き
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)