紡績ぼうせき)” の例文
余程鍛練たんれんして上手になった人が、まずむらのない細い糸を拵える位のもので、その細い糸といったところで紡績ぼうせき糸のようなものは夢にも見ることが出来ん。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
秋草には束髪そくはつの美人を聯想すなど考えながらこゝを出でたり。腹痛ようやく止む。かねふち紡績ぼうせき煙突えんとつ草後にそびえ、右に白きは大学のボートハウスなるべし、端艇ボートを乗り出す者二、三。
半日ある記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
郷里の家やしきは人手にわたってあとは紡績ぼうせき工場がたっている。もしいまでもあんな大きな家に住んで昔のままにいばっているとすれば、五人のお孫さんがこんなに優良かどうかはなはだ疑問ぎもんだ。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
夫婦ぐらしなれば格別かくべつ、もしも三、五人の子供または老親あれば、歳入さいにゅうを以て衣食を給するにらず。故に家内かない力役りきえきたうる者は男女を問わず、或は手細工てざいく或は紡績ぼうせき等のかせぎを以てかろうじて生計せいけいすのみ。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)