素顔すがお)” の例文
旧字:素顏
顔の大きな刀傷は、できるだけ、素顔すがおをかえるために、絵具えのぐでかいた贋物にせものだったんだ。どうだ机博士、面白い話じゃないか
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして囚徒ジャン・ヴァルジャンは司教の前には尊敬すべき純潔なる姿となるであろう。世人は彼の仮面を見る、しかし司教は彼の素顔すがおをながめる。
九月となりてわれはここに初めて団菊両優の素顔すがおとその稽古とを見得たり。狂言はたしか『水戸黄門記みとこうもんきとおしにて中幕「大徳寺だいとくじ焼香場しょうこうばなりしと記憶す。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
これが、素顔すがおかどうかはわかりませんけれど、頭の毛をきれいにちぢれさせた、ひげのない好男子です。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その仮面は、ありふれた里神楽の仮面もあれば、極めて古雅なる伎楽ぎがくめんに類したのもあるが、打見たところ、篝の周囲に集まるほどのものが、一人として素顔すがおを現わしたのはありません。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
御念ごねんの入ったごあいさつです。気が変になんかなりませんから、早く素顔すがおと素顔とをつきあわせましょう」
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
『役者夏の富士』は舞台に出でたる役者を描かずして、そが平素日常の素顔すがおを取りその住宅庭園の後景を配合せしめたる処、役者絵始まりてよりいまだかつてその例なき新意匠なり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「ひとつ、きみの素顔すがおを見せてもらおうか。」
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おやおや、お前さんはなんてえなさけない顔をするんだろう。わたしにゃ、紗の三重ベールなんか、あってもないのと同じこと、お前さんの素顔すがおが、ありありと見えているんだ
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)