約定やくじょう)” の例文
「これこれの家を建てますと請負ったら、約定やくじょうどおり家を建てて、普請ぬしに引渡すのが棟梁の仕事だ」と茂次は云った
ちいさこべ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「——殿。およろこび下さいまし。三河殿と和協わきょうの議、遂に、調いました。しかもほぼ御当家のお望みに近い約定やくじょうの下に」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何のめにどうして請取たと云う約定やくじょうもなければ何にもない。ただ金を請取たと云うけの印ばかりである。代言流義に行けば誠に薄弱なほとんど無証拠といってもい位。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
約定やくじょう通りに入れることは滅多にない。ひどく足りない年が続くと、田川さんは田地を手放す。それも村の人に知られたくないから遠方のを片付ける。田舎の金持は辛い。
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかしながら約定やくじょうの時刻にも赤羽橋へ来るということもなく、新銭座の家へ行って見れば、家の中はさんざんであるのに、子供が一人、声をらして泣いているばかり。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それにつけても田丸殿! この安の父母を、そこもとのお手でお探しくださるという条件で、わしは日光へまいりますのですぞ。かならずこの約定やくじょうを御失念なきよう……
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
新「二時少し廻った時分迄には屹度来るから、其の積りで約定やくじょうを極めてさえ置けばいのだ」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
約定やくじょうによって、生国美作みまさかの郷士宮本無二斎の一子武蔵、試合に出て参りました。名目人源次郎どのはいずれにおわすか。さきの清十郎殿や伝七郎殿のごとき御不覚あるなよっ。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お約定やくじょうによって、今朝、毛利方から二名の人質を送って参りました」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そちは軍事から政治向きまで、弟直義にゆだねて、多くは自身あずからぬようにいうたが、そちの約定やくじょうによれば、天下の成敗は公家くげにまかせまいらさん——と、明記しておる。その儀と、矛盾むじゅんはせぬか
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゆく末とも、朝倉領には兵を入れぬという約定やくじょうだった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、親睦しんぼく約定やくじょうをとりむすんである。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)