糧道りょうどう)” の例文
糧道りょうどうが苦しいのだろう。自暴やけという奴だ。人間、ゆると何を為出来しでかすかわからん。怖いのは火の用心だよ』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
暴徒に襲われるのはこれが始めてではなかったが、この時は最も困窮におちいった。糧道りょうどうが絶たれ、一同火食せざること七日におよんだ。さすがに、え、つかれ、病者も続出する。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
いつか四どう糧道りょうどうをふさがれ、洛内の食糧は極度に枯渇こかつしてきたのである。いまにして、後醍醐の帷幕いばくは、さきに正成がすすめた戦略を、実施させていたとみえる。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
糧道りょうどうの一つはあすから開ける。——佐々木道誉、斯波しば高経らが、あとにあって、東海の糧米を、やがてどしどし輸送して来よう。これで洛中の士気はいちばい高まる
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まったく糧道りょうどうを断たれてからもう三十日以上にもなるという。それだのに、沈みかけている水城の上には、生気がみなぎっているのだ。そこに少しの危なげな悲鳴もない。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お案じあそばされますな。やがては続々と、きびすを次いで集まりましょう。ここは、何せい山せまき土地、俄な大軍は、布陣にも混雑するばかり……。それに、糧道りょうどうもつづきません」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はや丹波口にも敵影はなく、阿弥陀ヶ峰にっていた奴ばらも味方が追っぱらってしまったよし……。いまや糧道りょうどう枯渇こかつは、われよりは、行宮あんぐうと義貞のほうに、瀕死ひんしの急を告げだしている。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)