籤引くじびき)” の例文
毎晩籤引くじびきで、夜のとぎをする妾をきめると言ふことになつてゐるが、近頃は若い妾のお袖を可愛がり、お吉を追つ拂つて、日が暮れるとお袖を
子之助はひとえ羽織とあわせとを遊所に持て来させて著更え、脱ぎ棄てた古渡唐桟こわたりとうざんの袷羽織、糸織の綿入、琉球紬りゅうきゅうつむぎの下著、縮緬ちりめんの胴著等を籤引くじびきで幇間芸妓に与えた。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
僕達は早速緊急クラス会議を開催し、各自の分担を籤引くじびきによつて定めることとした。結局僕の責任に決定をみた講座は霓博士の「ギリシャ哲学史」であつた。
霓博士の廃頽 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
籤引くじびきとやろうじゃねえか、籤を引き当てた順で、この女たちを片っ端から一人ずつ連れて、どこへでも勝手なところへ届けてやることにしたら面白かろうじゃねえか
「吉之助一人の仕業と、誰がおもう? 籤引くじびきにでもして、五人は、こしらえんといかん」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
籤引くじびきがいいや、みんなで籤を引いて、当った者が親分のお供をするのがいいや」
入れ札 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
……もっとも、毎月籤引くじびきがあってそれに当った人間は、血を絞られなければならないけれど、千人余りの数の中から、たった五十人だけ選ばれるんだからな、容易なことでは当りそうにもない。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そうだ、これからの大役を、籤引くじびきで一役ずつ引受けてもらうのだ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
町内の無盡で、昨夜の籤引くじびきで御座いました。意地の惡いもので、たつた一と晩の違ひで、菊屋の御主人に喜んで頂くことの出來なかつたのが殘念でございます。
一同稲荷社いなりしゃまいって神を拝し、籤引くじびきによって生死しょうしを定めるが好い。白籤に当ったものは差し除かれる。上裁を受ける籤に当ったものは死刑に処せられる。これから神前へ参れ
堺事件 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「さあ、今晩はみんなして思い入れ怖い話をしてごらん、そうして、一つ怖い話をしたら籤引くじびきで一人ずつ、この花籠を持って御簾みすまで行って、これを床の間に置いておいで——」
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
怪しい奴ばかりで、——もつとも女房子のある市十郎が、同じ屋根の下に二人も妾を飼つて、籤引くじびきで毎晩とぎをさせるなんざ、助平なお大名のやりさうな事で、見せつけられる者は、誰だつて腹を