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篋
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はこ
蘭軒は平素身辺に大小種々の
篋を置いた。恐くは
小什具を貯へ、又書紙を
蔵むる用に供したのであらう。起居不自由なる蘭軒が
篋篚の便を藉ることの多かつたのは、固より
異むに足らない。
その寺に、今から三、四代前とやらの住職が
寂滅の際に、わしが死んでも五十年たった
後でなくては、この文庫は開けてはならない、と
遺言したとか言伝えられた堅固な
姫路革の
篋があった。
ひとつ
篋にひひなをさめて
蓋とぢて何となき
息桃にはばかる
おもはれて
今年えうなき舞ごろも
篋に
黄金の
釘うたせけり