はこ)” の例文
蘭軒は平素身辺に大小種々のはこを置いた。恐くは小什具せうじふぐを貯へ、又書紙ををさむる用に供したのであらう。起居不自由なる蘭軒が篋篚けふひの便を藉ることの多かつたのは、固よりあやしむに足らない。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
その寺に、今から三、四代前とやらの住職が寂滅じゃくめつの際に、わしが死んでも五十年たったのちでなくては、この文庫は開けてはならない、と遺言ゆいごんしたとか言伝えられた堅固な姫路革ひめじがわはこがあった。
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ひとつはこにひひなをさめてふたとぢて何となきいき桃にはばかる
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
おもはれて今年ことしえうなき舞ごろもはこ黄金こがねくぎうたせけり
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)