笄町こうがいちょう)” の例文
僕が記憶おぼえているだけでも駒沢や、金杉や、小梅、三本木という順に引越して行きまして、一番おしまいに居た麻布の笄町こうがいちょうからこっちへ来たのです。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
伯爵母堂とともに別居していた麻布笄町こうがいちょうの別邸から、福岡の炭鉱王伊藤伝右衛門氏にとつぐまで、別段文芸に関心はもっていられなかったようだった。
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
この少年は、相川泰二あいかわたいじ君といって、小学校の六年生なのですが、きょうは近くのお友だちのところへ遊びに行って、同じ麻布の笄町こうがいちょうにあるおうちへ帰る途中なのです。
妖怪博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ある日も私は次郎と連れだって、麻布あざぶ笄町こうがいちょうから高樹町たかぎちょうあたりをさんざんさがし回ったあげく、住み心地ごこちのよさそうな借家も見当たらずじまいに、むなしく植木坂うえきざかのほうへ帰って行った。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
今のお若い方々からお叱言こごとが出るといけませんから、ちょっとおことわり申して置きますが、長谷寺は有名なお寺で、今日ではその所在地が麻布区笄町こうがいちょう百番地ということになっていますが
半七捕物帳:65 夜叉神堂 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いま笄町こうがいちょうかたに過ぎし車の音かすかになりて消えたるあとは、しずけさひとしお増さり、ただはるかに響く都城みやこのどよみの、この寂寞せきばくに和して、かのうつつとこの夢と相共に人生の哀歌を奏するのみ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
ウィルソンは、いま、麻布笄町こうがいちょうの、もと宮さまのおやしきに住んでいるわ
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それからツル子夫人は中野の邸を売り払って麻布あざぶ笄町こうがいちょうに病室を兼ねた小さなうちを建てて住んだものだが
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
笄町こうがいちょうへやってくれ」
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
私が九歳の時、お祖父様、お祖母様、母、妹等は筥崎から父に従って上京し、麻布の笄町こうがいちょうに住んだ。
父杉山茂丸を語る (新字新仮名) / 夢野久作(著)
▲きょうの午前十時に美人と淫蕩で有名な鶴原子爵未亡人ツル子(三一)が一人の青年と共に麻布あざぶ笄町こうがいちょうの自宅で焼け死んだ。その表面は心中と見えるが実は他殺である。
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)