竹紙ちくし)” の例文
「時計にネジをかけて下さいな。」と言って弱い竹紙ちくしのような微笑んだしわを頬にあらわした。
音楽時計 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
支那から伝来して来た竹紙ちくしという、紙を撚合よりあわせて作った火縄ひなわのようなものがあったが、これに点火されておっても、一見消えた如くで、一吹きすると火を現わすのでなかなか経済的で
亡び行く江戸趣味 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
神仏に祈願するときには、竹紙ちくしを焼くことが盛んに行われておる。竹紙とは、名のごとく竹にて製したる黄色の紙にして、これに金を塗りつけたるものと銀を塗りつけたるものとがある。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
手風琴や竹紙ちくしの横笛などが加はる青年バンドに調子を合せて、技手はたゞそれをぐる/\回すだけであるが、次第に急速に進む音楽と共に、いつまでも回つてゐると、見物は鬨の声を挙げて悦んだ。
熱海線私語 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
木乃伊の破片かけらを手に入れて、その粉末を博士の室へ、こっそりき散らせて置かせたり、お前方東洋の日本の港で、うまい仕事をやった時、何かの用に立つだろうと、買って持っていた竹紙ちくしという紙へ
木乃伊の耳飾 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
明笛みんてき竹紙ちくしすらだに舌ねぶる鼠なりきやひやぶりける
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
および触り冬は頼めし明笛の竹紙ちくしのつよき張りぞひびらぐ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)