がま)” の例文
炭焼きの勘太郎は妻も子も無い独身者ひとりもので、毎日毎日奥山で炭焼がまの前に立って煙の立つのを眺めては、淋しいなあと思っておりました。
虫の生命 (新字新仮名) / 夢野久作海若藍平(著)
「それや好都合だった。ほかじゃないが、そちの炭焼がまで、人間の体を一箇ひとつ、こんがりと焼いて貰いたいのだが……」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それが今一段進んでその辺で炭を焼く、石灰を焼くとかいう段になるとそれでは済まぬのであるいは炭焼沢であるとか灰谷であるとか七之助がまであるとかいう名を附ける。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それから最近の事件では、若い行脚僧あんぎゃそうがそれを見たので、娘の父が憤って、熊猟に用いる槍で突殺つきころしたともいう。その死骸はいずれも炭焼がまに入れて灰にしてしまうのが例とやら。
壁の眼の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)