窮余きゅうよ)” の例文
そこで骨董商の主人は、窮余きゅうよの一策を案じ、自分が泥棒に化け、工房の天窓から忍びこみ、その宝石を盗んでどこかへ隠してしまう。
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
人間の冷静な理知に訴えるだけの力のない人が、窮余きゅうよさくとして用いる手段だからね。それに誇りを感ずるなんて考えてみると滑稽だよ。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そこで帆村は窮余きゅうよの策として、宿帳を見せて貰った。目下の逗留客とうりゅうきゃくは、全部で十組であった。男が十三人に、女が六人だった。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ついに窮余きゅうよの一策が生れた。お菊を城内へ入れることである。これはこの事が考え始められてから割あいにはやく運んだ。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すっかり追い詰められて手も足も出なくなっている二人は、昨夜窮余きゅうよの一策で大胆にも繋留けいりゅうちゅうの河船を襲い、拳銃ピストルで番人を脅迫して食糧を奪い去ったというのである。
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
していたが、何うも別れが惜しい。前の晩奥田君が引き止めたのに、キッパリ断った後だから、今更延す口実がないんだ。窮余きゅうよの一策、即ち足を踏みすべらして、あッと言いさま、庭へ飛び下りた
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「はっ……」と、いよいよ当惑したらしく、窮余きゅうよの一策、自分もあわただしく支度をして
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、鐘巻一火かねまきいっかは中にはさまってこまりはてたあげく、窮余きゅうよの一さくを持ちだして
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みなこれ味方の為の窮余きゅうよの一策であり、万が一にも、殿が花隈城まで参って、海上へ船で脱し、毛利家の領内まで無事に達することができれば、折返して、かならず吉川、小早川の水軍が
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)