窘窮きんきゅう)” の例文
其の永楽帝の賽児をもとむる甚だ急なりしに考うれば、賽児の徒窘窮きんきゅうしてほこって立つに及び、あるいは建文を称して永楽に抗するありしも亦知るべからず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その度毎に与八が、ダニに食いつかれた芋虫いもむしのように窘窮きんきゅうするのを、ダニがいよいよ面白半分になぶる。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その他片山桃雨氏と、石山桂山氏は早くより俳句を止めて、今は消息を絶っている、石井得中氏はこれも亡くなったが、末路は最も窘窮きんきゅうしていて気の毒であった。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
どうにかしなければならないと思いつつもどうにもする事が出来ないでひとりで窘窮きんきゅう煩悶していた。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
いかにも済んでしもうた、済んで、このような窘窮きんきゅうが来たのじゃ、打開の道を、われらは蝦夷への移住と考えた、したが、おぬしらは、それを薩長政府への愁訴と考えておる
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
先輩は怒鳴どなりだした。当時閥族ばつぞく政府へ肉薄して、政府をして窘窮きんきゅうの極におとしいれていた野党の中でも、その中堅とせられている某党の智嚢ちのうの死亡は、野党にとっての一大打撃であった。
雨夜草紙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
追窮されて必ずしも窘窮きんきゅうするということはないが、人間の精力というものも限りのあるもので、そういつまでも、野宿と、草根木皮生活に堪えられるものではない。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
子たるもの、家臣たるもの——に、そのものたちの窘窮きんきゅうがここで今こそ打開される。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
次第によっては自分たちが袋叩きの憂目うきめにあって、生死のほどもあぶない、ああ、やり過ぎたわい——と、見るも無惨な窘窮きんきゅうの色が、売りかけた方に現われたのを見て取った買方が
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)