窓外まどそと)” の例文
その時分知っていたこのの女を誘って何処か凉しい処へ遊びに行くつもりで立寄ったのであるが、窓外まどそと物干台ものほしだいへ照付ける日の光のまぶしさに辟易へきえきして
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
さきには私達の園をいろ/\な小鳥が訪れた。然し夏に入つてからは、胸毛の紅い美しい小鳥のみが、いつも一羽で、いつも同じ窓外まどそとの崖寄りの林檎の苗樹に止つては、啼いてゐた。
雪をんな (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
「その妖怪が窓外まどそとに立ってこの室を覗いて居たのでした」
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
窓外まどそとの日光を見て四十男の神官しんくわん
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
窓外まどそとの軒燈だけには已にのついて居る夕闇の座敷に女中が臺付きのランプを持つて來る頃まで話し合つた。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
彼は寝衣ねまきかわかしやうのないのに困つて、ぼんやりと窓外まどそとながめて居た。
哀しき父 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
彼は窓外まどそとを呼び過ぎる物売りの声と、遠い大通りに轟き渡る車の響と、厠の向うの腐りかけた建仁寺垣けんにんじがきを越して、隣りのうちから聞え出すはたきの音をば何というわけもなく悲しく聞きなす。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)