稲扱いねこ)” の例文
旧字:稻扱
以前、なたや鎌などを売りに、この村へ出入りしていたが、それから三四年姿を見せずにいて、最近また、稲扱いねこき機械を売りに歩き廻っていた。
山茶花 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
馬盥ばだらいだのふいごだの稲扱いねこきだのが置いてあったが、そのずっと奥の方に、裸体はだか蝋燭が燃えており、それを囲繞かこんで、六人の男が丁半しょうぶを争っていた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
とにかくに摺臼すりうす唐箕とうみが採用せられて、玄米げんまいの俵が商品となるまでの間は、稲作作業の終局と考えられたのは、稲扱いねこきという仕事が済んだことであった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
見れば細君は稲扱いねこく手を休めた。音作の女房も振返つて、気の毒さうに省吾の顔を眺め乍ら、前掛を〆直しめなほしたり、身体の塵埃ほこりを掃つたりして、やがて顔に流れる膏汗あぶらあせを拭いた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ところが、やがて五六ヶ月経って秋の収穫期とりいれどきになると、後家さんの下ッ腹が約束の通りにムクムクとセリ出して来たのでドエライ評判になった。どこの稲扱いねこでもこの噂で持ち切った。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
居酒いざけの風習は起原必ずしも新しからず、少なくとも稲扱いねこき発明以前であったとは言える。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そこに親子、こゝに夫婦、黄に揚る塵埃ほこりを満身に浴びながら、我劣らじと奮闘をつゞけて居た。もみを打つつちの音は地に響いて、稲扱いねこく音に交つて勇しく聞える。立ちのぼる白い煙もところ/″\。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)