稟性ひんせい)” の例文
それらの衒気と感傷とはそれが真摯にして本質的なる稟性ひんせいに裏付けられているときには青春の一つの愛すべき特色をつくるものである。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
一、第二期に入り来る人といへども、その人の稟性ひんせいにおいて進歩の方法順序において相異あるがために、発達する部分に程度の相異あるを免れず。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
頑児矩方のりかた、泣血再拝して、家厳君、玉叔父、家大兄の膝下しっかもうす。矩方稟性ひんせい虚弱にして、嬰孩えいがいより以来このかたしきりに篤疾とくしつかかる。しかれども不幸にして遂に病に死せざりき。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
妻もご同門ではあり、芸術家です、どんなに、その愛情が灼熱的しゃくねつてきであろうか、と期待しましたのに、……どうも冷たい。いかにも冷やかですが、稟性ひんせいのしからしむる処ですかな。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれども、稀に出る、高い稟性ひんせいを持つ人物というものは、よく自分を、人間以上のとんでもない位置に置きたがるものだ。検事の苦悶も、呵責も、実にそこから発しているのではないか。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ちっとも光りのない稟性ひんせい
しかしその時日本人固有の稟性ひんせいのうまみは存して居るであらうか、何だか覚束おぼつかないやうにも思はれる。(六月十三日)
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)