神人しんじん)” の例文
見下してカラカラと笑った様子なぞ、キチガイというよりも、神人しんじん的だね。私はゾッとしましたよ。何か威に打たれたような思いだったよ
神サマを生んだ人々 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
筆はおのづから勢を生じて、一気に紙の上をすべりはじめる。彼は神人しんじん相搏あひうつやうな態度で、殆ど必死に書きつづけた。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
幽明ゆうめい物心ぶっしん死生しせい神人しんじんの間をへだつる神秘の一幕いちまくは、容易にかかげぬ所に生活の面白味おもしろみも自由もあって、みだりに之を掲ぐるのむくいすみやかなる死或は盲目である場合があるのではあるまいか。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「お前さんは神人しんじんだ、どうしてせがれの死骸がここに在ることを知りなされた」
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
舟中の人もおどろき怪しんで見まわすと、舟をる五、六町の水上に、一個の神人しんじんの姿があざやかに浮かび出た。立派なひげを生やして、黒い紗巾しゃきんをかぶって、一種異様のけものにまたがっているのである。
神人しんじん等が私慾の一点も加えられざる処
所有 (新字新仮名) / 今野大力(著)
門弟や里人の念流と樋口家に対する態度は、まさしく教祖や神人しんじんに対するそれで、村の誇りであり、彼らの生き甲斐ですらもあるように見うけられるほどだ。