矢狭間やざま)” の例文
四つとも同じような建て方で、その特色とするところは、矢狭間やざまづくりの窓のあることと、四筋の長い廻廊をもって、本邸と通じていることとであった。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すッと向うに浮いて行って、遠くの、あの、城の壁の、矢狭間やざまとも思う窓から、顔を出して、こっちをのぞいた。そう見えた。いつの間にか、城の中へ入って、向直って。……
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かの女は矢狭間やざまの上へふたりを乗せ、霧にとざされた城下町のほうを指さしながら
日本婦道記:忍緒 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
出邸には全く人気がなく、矢狭間やざま造りの窓から覗くと、内部は整然と片付けられていた。で、内へはいってみた。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
奥の正面、及び右なる廻廊の半ばより厚き壁にて、広き矢狭間やざま狭間はざまを設く。外面は山岳の遠見とおみ、秋の雲。壁に出入りの扉あり。鼓の緒の欄干そと、左の一方、棟甍むながわら、並びに樹立こだちこずえを見す。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
広さは十六帖、西に面して板敷の押廻しがあり、妻戸も遣戸やりどもあけてあるので、小砂利を敷いた広場が、矢狭間やざまのある白い土塀まで、初秋の午後の陽をあびて、眼にしみるほど明るく見えていた。
まぶしいような七月の日光が、矢狭間やざまからさしこんでいた。
日本婦道記:笄堀 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)