眼顔めがお)” の例文
旧字:眼顏
何と言ったらいいか、この手のおんな特有な狡猾ずるい顔付で、眼をきょろきょろさせている。眼顔めがおで火鉢を指したり、そらしたり、兄の顔を盗み見たりする。
城のある町にて (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
その内に蒸気が来ると、互に眼顔めがおで話し合って、子分共は岸に踏み止り、親分だけ一人船に乗り込みました。
悪人の娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
帰りがけに、遠くで、喬之助と音松と眼が合うと、多勢の捕方をうしろに押さえて動かさない音松、それとなく頭を下げて、早くお帰りなさい、と眼顔めがおで知らせた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
アマンドさんが、眼顔めがおで、行ってやれ、と合図をする。ピエールさんが渋々と立ちあがる。
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ヒソヒソ、コソコソ、眼顔めがおの集まりが、やがては、声を大にしていう。
ハッと思うと同時に、父の眼顔めがおに、私を見附けたという喜悦よろこびの表情の動くのを見ました。父は、口をいて、何かを叫び、両手を上へ揚げて、一心不乱に私の方へ突進して来ようと焦燥あせっている有様。
蝋化ろうかしたような蒼白い凝脂ぎょうしに、痛々しくも残る傷を見て、多勢の人たちを眼顔めがおで隣の部屋に追いやり、父親の市兵衛といっしょに残っている、妹娘のお吉に、ささやき加減に訊くのです。
金山寺屋の音松は、眼顔めがおで知らせながら、教えるようにいったのだった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)