真後まうしろ)” の例文
旧字:眞後
真後まうしろせりなずなとあり。薺は二寸ばかりも伸びてはやつぼみのふふみたるもゆかし。右側に植ゑて鈴菜すずなとあるはたけ三寸ばかり小松菜のたぐひならん。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
すると彼の真後まうしろには、白々しろじろと尾を垂れた鶏が一羽、祭壇の上に胸を張ったまま、もう一度、夜でも明けたようにときをつくっているではないか?
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
するとすぐ真後まうしろの六尺ばかり離れた処に、影のように、あの男の子が立っているのです。黙りこくって、じっと爺さんがする事を眺めているんです。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
房一が気づいた時には、その男はもう房一の真後まうしろに立つてゐた。黒い背広のお古にズボンだけは新しさの目立つカーキ色の乗馬用をはいて、赤銅縁の眼鏡をかけたその男は
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
自分の真後まうしろに、野営の焚火の光があったのである。潮流は直角に曲っていて、それと共に高いスクーナー船と小さな踊っているような革舟とをぐるりと押し流して来たのだ。
というのもあり、また全くそれをいわないのもあるが、動いている人の輪がはたと静止したときに、真後まうしろにいるものを誰かときくのだから、これは明らかに「あてもの遊び」の一つであった。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)