皺立しわだ)” の例文
ちまちまとした顔は白っぽく乾いて、ちぢんだようにみえ、膝の上にある両手も灰色に皺立しわだって、指先は力なく垂れていた。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
つぼのごとく長いはなびらから、濃いむらさきが春を追うて抜け出した後は、残骸なきがらむなしき茶の汚染しみ皺立しわだてて、あるものはぽきりと絶えたうてなのみあらわである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
郎女は、しずかに両袖もろそでを、胸のあたりに重ねて見た。家に居た時よりは、れ、皺立しわだっているが、小鳥の羽には、なって居なかった。手をあげて唇に触れて見ると、喙でもなかった。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
唇の厚い、眉毛の太い、酒焼けであかくなったつやのいい顔が、とつぜん老人にでもなったように、暗く皺立しわだってみえた。
月の松山 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)