百千ももち)” の例文
見る見る野面や山の肌は霧にこめられて真珠色となり、庵室の庭に咲き乱れた百千ももちの秋の草花は、濡れて一層色を増した。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
百千ももちに、千々に、心を苦しみ、砕いた揚句が、はじめてその結果圓朝は新作噺の自作自演ということに思い至った。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
西班牙スペイン人の男性か女性か知らないが、第一回に嚔をしたものゝ上に百千ももちの呪いあれ! 嚔はその処置を市当局で斯くの如く制定するほどの重大事件になった。
女婿 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
随てはやてか、随てつなみか、——此時感情の海と思想の空とは、恰も雲走り、潮うづまくのありさまを制するあたはずして、百千ももちの巌はその一箇をだも動かすべからず、はた寸毫も犯すべからざるがごとし。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
われは知る強き百千ももちの恋ゆゑに百千の敵は嬉しきものと
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
つめたげのまなこ百千ももちは地にあれ愛にわが足るあめの星星
短歌 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
百千ももちの鳥はさけぶめり
枯草 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
百千ももちむれなして
幻燈の花輪車かりんしゃのよう辮髪の先の灯は、百千ももちに、千々ちぢに、躍って、おどって、果てしなかった。まさにまさしくこれだけは逸品だった。二十人あまりのお客たちが言いあわせたように拍手をおくった。
随筆 寄席囃子 (新字新仮名) / 正岡容(著)
朝毎に百千ももちの薔薇は咲きもせめ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
千重ちへの浪、百千ももちの鴎。
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)