白襷しろだすき)” の例文
その草もない薄闇うすやみの路に、銃身を並べた一隊の兵が、白襷しろだすきばかりほのめかせながら、静かにくつを鳴らして行くのは、悲壮な光景に違いなかった。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
頭には陣笠、羅紗羽織らしゃばおりを着て、羽織の上から白襷しろだすきをかけ、くくりばかま草鞋わらじばきであった。左の腕に、長州藩の伍長級の腕章を縛りつけている。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのどれにも、白鉢巻、白襷しろだすきの青年が乗り、後尾には、候補者の名を書いた旗を立てている。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
あすは討入りという四月二十日の夜、数馬は行水を使って、月題さかやきって、髪には忠利に拝領した名香初音はつねき込めた。白無垢しろむく白襷しろだすき白鉢巻しろはちまきをして、肩に合印あいじるし角取紙すみとりがみをつけた。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そのの八時何分か過ぎ、手擲弾しゅてきだんあたった江木上等兵は、全身黒焦くろこげになったまま、松樹山しょうじゅざんの山腹に倒れていた。そこへ白襷しろだすきの兵が一人、何か切れ切れに叫びながら、鉄条網てつじょうもうの中を走って来た。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)